ConMas i-Reporterを活用して訪問診療時に記載するカルテや診療報告書を電子化した、医療法人社団コンパス コンパスデンタルクリニック 理事長で歯科医師の三幣利克(みぬさ としかつ)氏(上写真中央)と、同クリニックのバックオフィス業務を受託する株式会社メディパスのコーディネート部 部長 清水雅大(しみず まさひろ)氏(同左)に、ConMas i-Reporterの活用状況、導入経緯、評価をうかがいました。(写真右:シムトップス システム営業部 生出)
在宅医療コーディネート、在宅歯科医療コーディネート、在宅調剤コーディネート、生活リハビリコーディネート、および介護・医療サービスサポートを手がける。
高齢者やご家族、介護者のニーズに合わせて適切な医療機関へ「つなぐ」、医療機関・介護事業者の活動の「支援」を行う。本社東京、大阪、名古屋。
首都圏(赤羽、立川、三鷹、横浜、湘南台、大宮)、東海(名古屋)、および近畿(吹田)に計8箇所の診療拠点を展開する在宅療養支援歯科診療所。株式会社メディパス創業時に診療機関として同時に設立、バックオフィス業務をメディパスに委託。
歯科医師、歯科衛生士、コーディネーターがチームを組んで巡回する
診療機材一式を車に積んで巡回する。訪問先は介護施設や個人宅など。
介護施設の規模によっては1回の訪問で数十人を診療することも
-- 株式会社メディパスでは、どのような目的でConMas i-Reporterを導入しましたか。
当社では、バックオフィス業務を受託する「コンパスデンタルクリニック」で、カルテ・診療内容報告書等を電子化・iPadアプリ化するため、ConMas i-Reporterを導入しました。
カルテ……患者ごとに作成される診療記録。医師が診察のたびに症状、所見、検査成績、診断、処置、投薬などを記載する。記録後最低5年間保存することが法律で義務づけられている。
診療内容報告書……患者の関係者に、訪問診療の内容を報告する書類。ケアマネージャー宛、介護施設宛、家族宛など、通常3~4通を医師が診察のたびに作成する。
紙の書式をそのまま再現
選択肢が決まっている項目はポップアップメニューから選択できるので、ミスなくスピーディーに入力できる
iPadカメラで撮影した写真も挿入できる
責任の所在を明確にするため、医師による署名欄は手書き入力にした
ページ間で重複している項目はカーボンコピーされるので、同じ診療内容を複数の報告書に記入する手間も大幅に削減された
必須項目に入力がないとアラートが表示されるので、記入漏れがほとんど発生しない
サーバーに保存されているカルテを、訪問先からすばやく検索してダウンロードできる
-- ConMas i-Reporterでカルテ・診療内容報告書等をiPadアプリ化するにあたって、大切にしたポイントはありますか。
特に6つのポイントを大切にしました。
「書類作りに時間をとられなくなったぶん、より患者さんと向き合えるようになりました」
(コンパスデンタルクリニック理事長 三幣氏)
カルテには法令で定められた最低記載事項や、歯科医師会で推奨される全国共通の書式があります。これに加え、コンパスデンタルクリニックは訪問診療が専門なので、訪問診療特有の情報も記載しやすいように、カルテ等の書式に独自のアレンジを加えてあります。こうして確立された従来の紙の書式をiPadでもそのまま使えるようにしました。
要介護の患者さんへの訪問診療では、カルテのほかに、患者さんの関係者に宛てた診療内容報告書を、毎回計3~4通書く必要があります。各報告書には十数~数十に及ぶ記載事項があり、ご家族、ケアマネージャー、介護施設など、報告する相手によってポイントや表現を変える必要があります。書類間で重複する項目も多数あります。i-Reporterの豊富な入力支援機能を活用することで、重複記載の手間を省き、ミス・漏れなくスピーディーに記入できるようにしました。
口腔内の状況を記録する欄に、iPadの内蔵カメラで撮影した写真を挿入したり、手書きの文字や図を入力したりできるようにしました。
訪問診療先で予定外の患者さんから急な痛みの訴えあった場合など、緊急に処置が必要になった場合もスムーズに対応できるように、サーバーに保存されているカルテをすばやく検索・ダウンロードできるようにしました。
“記載内容に明確に責任を負う”という意味で、医師の署名欄は手書きで入力するようにしました。
患者さんの関係者とより密な連携が取れるように、訪問先で作成した診療内容報告書を、その場でご家族や介護施設やケアマネージャー宛にメールで送信できるようにしました。
-- ConMas i-Reporterを導入する前は、訪問診療先でのカルテ等をどのように作成・管理していましたか。
ConMas i-Reporterを導入する前は、紙ベースでこれらの書類を作成・管理していました。患者さん1人あたり10枚近くにもなるカルテや診療内容報告書を、各医師が毎日数十人分抱えて、訪問診療先を回っていました。
同じ診療内容について、表現やポイントを微妙に変えながら5枚も6枚も書類を書くのに医師の時間や労力を取られましたし、数十人分の書類を持ち運ぶのも大変でした。患者さんから急な往診依頼があった時、すぐ近くに医師がいても、わざわざ拠点に戻ってカルテ一式を取りに行かなければ対応できない状態でした。多数のカルテ原紙を毎回院外に持ち出すことにつきまとう紛失リスクもありました。
紙のカルテからレセプトコンピュータ(診療報酬明細書作成システム)に転記するために、医療事務スタッフや専用機を拠点ごとに確保する必要もありました。紙のカルテを保管するスペースも必要でした。医師が訪問先から拠点に毎日戻れるとは限らないので、書類が作成されてから医療事務スタッフによってレセプトシステムに転記されるまでにタイムラグが生じることもありました。
-- カルテ等の電子化を、どのようなきっかけで検討し始めましたか。
従来の首都圏に加え、近畿・東海地方にも診療拠点を置くことにしたことが、電子化を本格的に検討するきっかけになりました。診療拠点がすべて首都圏にあった頃は、医療事務スタッフが複数の拠点の事務処理を掛け持つことが可能でした。新たに拠点を置く地域で、それぞれ1ヶ所の拠点のために、専用の機器と要員を確保するのは予算的に困難でした。そこで、遠隔地での事務処理を可能にする手段として、カルテ等の電子化を検討し始めました。
-- カルテ等を電子化するにあたり、どのようなシステムを検討しましたか。
医療業界向け、歯科医院向けの電子カルテ化システムや、一般向けの帳票電子化システムなどを複数検討しました。
「ITの専門知識がなくても安全確実に導入・運用できるかどうかを重視しました」
(株式会社メディパス コーディネート部 部長 清水氏)
-- カルテ等を電子化するシステムを、どのような基準で選定しましたか。
主に7つの基準で選定しました。
医療業界向けのカルテ電子化システムは、医院内でのカルテ作成を前提にしていることが多く、“ノートパソコン1台までしかカルテを持ち出せない”といった制限が多く見られました。多数の医療チームが、複数の拠点から訪問医療を展開するスタイルに、制限なく対応するシステムを探しました。
iPad等のタブレットで動くアプリケーションには、「ブラウザベース」のものと「端末ネイティブ」のものがあり、「ブラウザベース」のアプリケーションでは、入力できる帳票のページ数や項目数、入力方法に制約があるとのことでした。また、本格的な図や手書き文字も、「ブラウザベース」のアプリケーションでは入力できないとのことでした。私たちは複数のページ・多数の入力項目・詳しい図を含む書式を扱う必要があるので、「ブラウザベース」のアプリケーションを使うシステムは除外しました。
私たちは、患者さんの関係者とより密接に連携を取りながら、より質の高い訪問診療を提供できるよう、カルテや診療内容報告書の書式や内容に、絶えず工夫を重ねています。このため、帳票の書式変更や入力項目の追加を、簡単にできるかどうかも重視しました。
「ブラウザベース」のタブレットアプリケーションでは、電波が届かずネットにアクセスできない環境では、帳票に入力できないとのことでした。訪問診療先になる建物の中では、電波が届かない場所も多くあります。この観点でも、「端末ネイティブ」のアプリケーションを使うシステムに的を絞りました。
私たちが扱うのは個人情報そのものですので、セキュリティー対策が十分かどうかもチェックしました。
自前の情報システム部門を持つほどの規模は、私たちにはありません。サーバーの設定や管理に関する専門知識がなくても、簡単かつ安全確実に導入・運用できるシステムであることが重要でした。
今後長く使っていくシステムですので、開発・提供する会社の規模や継続性に不安がないかどうかも確認しました。
以上7つの基準を中心に比較検討した結果、iPadネイティブアプリケーションを使うシムトップスの「ConMas i-Reporter」が基準を最もよく満たしていましたので、採用しました。
-- ConMas i-Reporterでカルテ等を電子化・iPadアプリ化したことで、どのようなメリットが得られましたか。
主に5つのメリットが得られました。
「ConMas i-Reporterを採用して正解でした」
書類作りに時間をとられなくなったぶん、医師が本来の診療に集中できるようになりました。いちいち机に向かって紙の書類をめくって記入していた頃に比べて、より患者さんと“向き合える”ようになったと感じています。
多数の患者さんを複数の医師で分担している大規模な介護施設などで、訪問した医師とは別の医師が担当する患者さんが急に痛みを訴えた時も、その患者さんのカルテをサーバーからダウンロードして、すみやかに診療できるようになりました。
紙からレセプトコンピュータに転記していた頃に比べて、医療帳票の作成工数が大幅に削減されました。記入ミスや記入漏れも圧倒的に少なくなり、確認や訂正に取られる時間や労力も減りました。
多数のカルテ原紙を持ち歩くことに伴う紛失リスクがなくなりました。
大阪・名古屋の医師が入力したカルテを元に、東京の事務スタッフがレセプト(診療報酬明細書)等を作成できるようになりました。遠隔地のバックオフィス業務を効率的に処理できるようになり、今後、診療拠点を増やしやすくなりました。
-- ConMas i-Reporterで電子化されたカルテ等の活用について、今後の期待などがあれば教えてください。
カルテが電子化されたことで、クリニック全体としての診療データのチェックや分析もやりやすくなりました。将来的には、ヒューマンエラーをより確実に防ぐ仕組みや、肺炎などの疾病の兆候をより早期に発見して発症を防ぐ仕組みの構築にも、電子カルテのデータを活用できるのではないかと考えています。レセプトコンピュータとの統合も、レセプトコンピュータ会社の協力を得ながら進めていきたいです。
お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。